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ポジティブ・フィードバックの力-批判も称賛も成長にはつながらない- 

2022-12-09

ポジティブ・フィードバックの力-批判も称賛も成長にはつながらない-

フィードバックは、うまくいかなかったこと、改善すべき点に焦点をあてて相手に伝えることと思っている方が多い。フィードバックを受けるほうは、「フィードバック=批判されること」と認識し、聞く耳を持たなかったり、自分の正当性を主張したり、素直にその言葉を受け止めず、効果がさほど高くありません。これはネガティブ・フィードバックと言われるものです。

神経科学をベースにした研究で明らかになったことは「批判によって生じる強烈な負の感情は「既存の神経回路へのアクセスを阻害し、認知、感情、知覚面の機能障害を生じさせる」(心理学、経営学教授 リチャード・ボヤツィス)とまとめられている。つまり、弱点や欠点に焦点を当てることは、学習を促進せずに阻害します。

一方、ポジティブ・フィードバックは、肯定的な面に焦点を当て、相手の行動、存在や結果を「承認」したことを肯定的な言葉で伝えることです。相手の可能性を信じ、成長を第一の目的として行います。「肯定的に」「思いやりを持って」コメントするため、ポジティブ・フィードバックを受けた側が「大切に思われている」と感じ、自分の存在を肯定し、自身の卓越性(強み)に気づき、自信をもって進んでいけるようになります。

組織開発の第一人者のデイビッド・クーパライダーの言葉を紹介しましょう。
「容赦ない批判や評価によって、多くは自分を防御するために自分の考えに固執するようになるか、さらにひどい場合には自分が無気力になることもあります。要するに、批判によってでは私たちは変わらないのです。けれども、自分自身について何が最高なのかを発見するとき、そして、自分の強みをもっと活用する具体的な方法を理解するとき、私たちは変わるのです。自分たちにとってうまくいっていることに共鳴することで、変化への準備を支えるカとなるのです」

ポジティブ・フィードバックの効果

「私は、これまでに、世界各国の大勢の立派な人々とつきあってきたが、どんなに地位の高い人でも、小言を言われて働く時よりも、褒められて働く時のほうが、仕事に熱がこもり、でき具合もよくなる。その例外には、まだ一度も出会ったことがない」『人を動かす』(D・カーネギー)

生まれた時からSNSがあって、オンラインで瞬時に反応を確認できることに慣れている今の若い世代は、無意識のうちに職場でも高い頻度のフィードバックを求めているようです。

私たちが若いころはうまくいっても当たり前のこととして何も言われませんでした。うまくいかないとすぐに怒られたり否定的な意見をもらうのが普通で、それを乗り越え頑張ることで成長したように思います。いまそのようなスタイルでマネージメントすると、すぐに折れたりやる気がなくなる人が増えています。ぬるいように見えるかもしれませんが、今の時代は、こまめなフィードバック特にポジティブなフィードバックが必要なのです。

「仕事の仕方はこのままでいいのか?」「求められていることがわからない」「私はうまくやれているのだろうか?」など、新人もベテランも、上司からフィードバックがないために不必要に悩んだり落ち込んだりして仕事に集中できなくなっています。

「作ってくれた資料がわかりやすかったから、相手を説得することができたよ」
「先日教えてくれた情報を会議でシェアしたら、部長が興味津々で聞いていたよ」
このようにちょっとしたことを、こまめにフィードバックすることで、仕事のやり方が明確になるだけでなく、さらに効率的になりパフォーマンスが高まるのです。

ポジティブ・フィードバックの効果

  1. やる気がでる
    誰かが自分を信じてくれていると思うと期待に応えたいと思う
  2. 自信が生まれる
    自分の行為に対して「○○してくれて助かった」言われることで自分の強みや得意なことが明確になり自信につながる
  3. 人間関係がよくなる
    ちょっとした接触、とくに肯定的(ポジティブ)であれば心が暖かくなり関係性が深まる
  4. 仕事への理解度が高まる
    仕事のやり方や価値観を何度も言うより、ポジティブフィードバックすることで理解が深まりその人の行動に定着する
  5. 主体性がアップ
    頻繁なポジティブフィードバックで「自分は何をすればいいのか、求められているのが」が明確になり積極的な行動や挑戦が起こる

ポジティブ・フィードバックは相手の強み(卓越性)がどのようなものかを理解できるように手助けすることによって、気づきのチャンスを与えられます。その人の中にすでに存在する強みに光を当てることで、彼らはそれを認識し、定着させ、再現し、磨きをかけることができます。これが成長を促進させるのです。

相手の言動で、ちょっとした強みが見えた時に、どんな言動なのか(具体的事実)と、どんな影響があったのかや自分が感じたこと(影響・思い)を私を主語にして率直に伝えることが重要です。「○○を見て、私はこういう印象を受けた」「○○を見て私はこう考えた」、あるいは単純に「君が何をやってのけたか、わかっていたかい」といった表現をするといいでしょう。

ポジティブとネガティブのバランス

アメリカの心理学者、マーシャル・ロサダ氏の研究によると、平均的な水準で人間がハイパフォーマンスを実現するためには、ポジティブな感情とネガティブな感情がおよそ3:1の比率で維持されることが重要だということです。日ごろポジティブなフィードバックをしていると、ネガティブ(修正の)なフィードバックも相手に届くのです。

人間関係で一番大事なことは存在承認

人間関係すべてにおいてポジティブ・フィードバック以前に、相手の存在を承認することが一番重要なことです。存在承認とは、相手の存在を承認し大切に扱うとか、相手に関心を示し、相手を気に掛けることです。1人の人間としてリスベクトし笑顔で挨拶をする、アイコンタクトをとる、気になったことは「疲れているようだけど、大丈夫?」「何か手伝おうか?」などのひと言を欠かさないようにすることです。「無関心」は、存在を承認されないということですから、叱られたり、怒られたりするよりも、さらにネガティブな影響を相手に与えてしまいます。

ちょっとしたポジティブな態度や一言が周りにいい影響をあたえます。最初は意識して行うようにしてください。

→フィードバックの基本はこちら

(参考)
フィードバックの誤謬(ハーバードビジネスレビュー 2019年10月号)
ポジティブフィードバック( ヴィランティ牧野祝子 あさ出版)
フィードバックの研修もありますのでお問い合わせください(広瀬)
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