某病院の看護師さん向けのファシリテーション研修の事例を公開します。

1.職場の課題

・教育担当者(看護部の教育を担う看護師)の方々が、研修においてグループワークの進行をおこなう上で、次のような問題が見られる。
  ①メンバーの意見を聞くが、その以上の話し合いを促すことができていない。
  ②メンバーの自主的な学びを促進するよりも、教育的な指導をおこないがちである。
このため、メンバーが研修での学びを「自分ごと」として咀嚼できず、学びが現場やカンファレンスで生かされない。
・教育担当者の方々は、ファシリテーションについてきちんと学んだことがなく、「何をしていいかわからない」ことが、問題の要因と考えられる。
・教育担当者の方々は、成長したい気持ちはあると考えられるので、ファシリテーションを学ばせたい。

2.研修の概要
教育担当者のファシリテーションスキルを養成するため、次のような「ねらい」で研修を実施したいと考えています。

≪研修全体のねらい≫

  • ファシリテーションの基礎となるグループプロセスをみる力を養う
  • 知恵と力をあわせる場づくり(ファシリテーション)のスキルを養う
  • ファシリテーションの基礎となるコミュニケーションスキルを養う
  • 体験のふりかえりから学ぶ力を養う
 

研修を通じて、次のような力をつけていただくことを期待しています。

  1.  一人ひとりの意見や想い、違和感や不安などを場に出すことを促す力
  2.  各人の知恵をあわせて、ともに話しあい、納得できる結論を促す力
  3.  各人が自主的に考え行動するために、一般的な知識を「自分ごと」に咀嚼することを促す力
  4.  実践をふりかえることを学び成長することを促す力

 研修は2つのフェーズで進めます。
 ①第1回(半日研修)   :ファシリテーションの役割を学びます。
 ②第2~6回(ミニ研修) :ファシリテーションに関するスキルを養うとともに、日々の実践のふりかえりから、より良い関わり方への気づきを促します。

 

3.研修の内容

(1) 研修時間
第1回目は、半日間(4時間程度)、2回目以降は、毎月2時間半程度を考えています。

(2) 実施方法
教育担当者が一度に集まることが困難であると予想されるため、2グループに分けて、並行して実施したいと考えています。

(3) 対象者
 ・貴院の教育担当者。一回につき、15~20名程度。

 

4.研修のプログラム
4.1 1回目の半日研修について
13時~17時(4時間)を想定して、次のような「ねらい」とプログラムを考えています。
 
(1) 研修のねらい    
・ファシリテーションの基礎となるグループプロセスをみる力を養う
・知恵と力をあわせる場づくり(ファシリテーション)の役割を学ぶ
 
(2) プログラム案
時間 内容
13:00-13:35 オリエンテーション(ねらい、学び方)
チェックイン(学ぶ態勢づくり)
13:35-14:25 グループプロセスについて学ぶ
・小講義「グループプロセスをみる」
・実習と対話「職場のグループプロセスをふりかえる」
(休憩)
14:35-16:40 ファシリテーションの役割に気づく
・実習「ファシリテーションの役割に気づく~『おもしろレジャーランド』」
・実習のふりかえり
・実習「ファシリテーションの役割を考える」(親和図作成)
・小講義「ファシリテーションの機能」
16:40-17:00 現場適用を考える
チェックアウト
    
  *ラボラトリー方式の体験学習法による研修プログラムです。
   一般的な知識の伝達だけでなく、グループ実習のなかの体験をふりかえることから、
   実践で活かすための“気づき”を促す学びかたです。

  *「参考資料」として、グループ実習のふりかえり用紙を添付しました。
   実習のあと、ふりかえり用紙に記入し、グループでわかちあいます。
   グループや各人の様子や、その変化、誰の言動がどのように課題達成に影響したのか
   などに気づきます。 
4.2 2回目以降の研修について

毎月1度、2時間半程度(たとえば14:30~17:00)の研修として、ファシリテーションの基礎となるコミュニケーションスキルを学ぶ場を設けます。
毎回、テーマに沿った体験学習とともに、現場で試した体験をふりかえります。実践から学んでいくためのステップアップの場として活用します。
    
★第2回:「ファシリテーションの基礎となるスキル~きく」
ファシリテーションの基礎となるコミュニケーションスキルとして、傾聴、要約、確認についてトレーニングします。あわせて、個人がグループにかかわるときに生じる「4つの懸念」について学び、懸念の低減が知恵と力をあわせる場づくりにつながることを学びます。
 ・オリエンテーション、チェックイン、1回目の復習
 ・「4つの懸念」の小講義
 ・傾聴と要約、確認の小講義と実習
 ・グループ実習とふりかえり
 ・現場適用を考える

★第3回:「ファシリテーションの基礎となるスキル~つたえる」
ファシリテーションの基礎となるコミュニケーションスキルとして、自己開示とフィードバックについてトレーニングします。自己開示と適切なフィードバックが懸念の低減を促し、互いの成長を促すことを体験します。
 ・オリエンテーション、チェックイン
 ・自己開示とフィードバックの小講義
 ・グループ実習と相互フィードバック
 ・現場適用を考える    

★第4回:「ファシリテーションの基礎となるスキル~みる」
ファシリテーションの基礎となるコミュニケーションスキルとして、グループプロセスや非言語メッセージ(からだが出すメッセージ)をみるスキルについてトレーニングします。
グループの様子や、一人ひとりの様子をみて、感じることで、より適切な働きかけが容易になります。また、自分自身が相手にどのような非言語のメッセージを出しているかに気づくことで、ミスコミュニケーションの解消をねらいます。
 ・オリエンテーション、チェックイン
 ・非言語メッセージの小講義と実習
 ・グループ実習とふりかえり
 ・現場適用を考える
      

★第5回:「ファシリテーションの基礎となるスキル~コンセンサス(合意形成)」
ファシリテーションの基礎となるコミュニケーションスキルとして、コンセンサスについてトレーニングします。知恵と力をあわせやすい会議のデザインと運営手法についても学びます。
  ・オリエンテーション、チェックイン
  ・会議の5つの段階についての小講義
  ・意思決定について小講義
  ・コンセンサスの実習と小講義
  ・現場適用を考える

★第6回:「研修全体のふりかえり~内省と対話」
この研修全体をふりかえります。研修での学びを実践で生かせたことや、生かせていないことをメンバー同士でわかちあい、より良いファシリテーションについての気づきを支援しあう場とします。
 ・オリエンテーション、チェックイン
 ・内省についての小講義と実習
 ・ファシリテーションについての対話
 ・各人の行動指針をまとめる