援助のあり方

 最後に、私から見た援助者のあり方と共感・共働の社会のイメージについて述べてみたい。

 援助者は頼まれたら、断れないのかというとそうではない。アサーションで言うと、断る権利もあるし、交渉をして折り合いを付ける権利もある。

 しかし、障害者と援助者の関係は弱者と強者の図式になりがちである。普通の関係でも、頼む側は不利な立場に立たされる。これが障害による社会的不利を生む根源ではなかろうか。

 そこで、私の提案は、援助者は「こうする予定だけど、いま手助けの必要はない?」とか、近くに入るときに、「少しの時間があるけど、今することない?」

などの声をかけてもらえると、頼みやすくなるのではないかと思う。ただし、援助者の都合優先が見えすぎると、振り回される感じを持つが。

 もう一つの提案は、日常の場面に機能障害や能力低下を背負っている人が、自分の側にいることを、ぜひ視野に入れておいてほしい。

 障害者が頼んだり、援助を求めたときに、率直な応答をかえすこと。安易な同調や妥協でなく、相手の気持ちに向って、言葉を返すことである。要求されても、できることとできないことがある。それを明確に伝え、解決策としてどのような選択肢が用意できるかを示す。

 

相互信頼・相互依存の社会

クォリティ・オブ・ライフということが福祉の世界で使われているが、一般的に施設や設備といった物質面に目が向いている傾向がうかがえる。

 しかし、「いのちの質」や「尊厳」とは自分の人生を自分が選ぶ、自分が人生の主人公であるという感覚を持てるときに、実感できるのではないだろうか。

 日常のささいで、何気ない動作のやり取りの場面で、お互いに、相手自身の必要な選択をその人に委ねらることによって、相互の信頼が築き上げられる。選択を委ねられることは、自分が信頼されている、大切にされいるということを確認することにつながるからである。

 クォリティ・オブ・ライフや「尊厳」の基礎には、障害者であるなしにかかわらず、一人ひとりが自尊感情をしっかりと持つことである。自分を肯定的に認める・自分に自信を持つ・自分を価値あるものと認める気持ちを持つことによって相互尊重、相互依存の関係を形成することができるのである。

 自尊感情をお互いに育てることによって、たとえ困難や危機的な場面に遭遇しても、すぐに他者に責任転嫁をすることなく、自らで解決しようとしたり、逆境の中でも希望を捨てず、行動しようとすることができるのである。

 このような人間関係をクォリティ・オブ・ライフを実現する<いのちのつながり>と呼んでみてはどうだろうか。

 私がイメージしている障害者とともに生活する共感・共働の社会は、お互いがこの<いのちのつながり>を日常生活の中で実現することである。相互信頼・相互依存の社会は、ごく身近な生活の中で自分の側にいる人のありのままを受け入れ、お互いの生活やあり方を視野に入れて、自らの日常生活を営むことである。

 

日本障害者雇用促進協会「働く広場」97年5月号掲載